「悪質水道工事トラブル学習会」を開催しました
講師:弁護士 北村拓也先生(適格消費者団体ひょうご消費者ネット理事)
6月28日、悪質水道工事トラブル学習会をオンラインで開催しました。奈良県の相談窓口でも、「突然のトイレのつまりや水漏れに修理業者を呼んだらネットの広告とはケタ違いの高額料金を取られた」といった事例が相次いでいます。当日は60人を超える方が参加され、この問題への関心の高さがうかがえました。
講師には、適格消費者団体ひょうご消費者ネット理事で弁護士の北村拓也先生をお招きしました。ひょうご消費者ネットでは2019年に排水設備事業者を相手取った差止請求訴訟を起こされ、団体側の主張がほぼ認めれれた内容で和解に至りました。
原告代理人を務められた北村先生にその経緯について詳しくお話を聞くことができました。講演の要旨は次の通りです。
- 水道工事トラブルは年々増加し、相談者は全世代にわたっています。平均支払額は20万円近くにのぼります。
- 自分が電話で呼んだのだからクーリング・オフできないと公言する事業者もいて、契約書に明記している事例もありました。
- 特定商取引法という法律で訪問販売は規制されていて「事業者の名称、内容、勧誘目的の明示」や「契約しないと意思表示した人への再勧誘の禁止」「不実告知の禁止」「法定事項を記載した契約書面の交付」などがあげられます。
- また第9条のクーリング・オフは無条件で契約解除を可能とするもので、契約意思が不安定なまま契約する消費者を保護します。損害賠償や違約金請求もなく商品の返還費用も事業者負担、クーリング・オフ妨害には措置が講じられます。行使は契約の日から8日間ですが、書面には不備が多いので起算日を遅らせることも可能であり、あきらめないことです。
- ただし、適用除外のひとつに「住居における取引を請求したものに対する取引」があり、いわゆる「来訪要請」が適用除外なのかが争点となっています。
- ひょうご消費者ネットが神戸地裁で起こした2件の差止請求裁判ではどちらも、「事業者が来訪してから商品や数量が決まる場合は来訪請求にあたらない」という 団体側の主張が認容されるかたちの和解となりました。
- 団体訴訟(差止)でなく個別訴訟の場合、法的構成はクーリング・オフ1本を中心にするのがいいでしょう。この他改正されたばかりの消費者契約法なども考えられますが、クーリング・オフはよりシンプルで分かりやすく主張していくことができます
- 差止訴訟の後、相手の業者はHP運営サイトで営業展開を広げ被害を県外へと拡大させていきました。リスティング広告を出しているこうした運営サイトが各地の悪質事業者の背後から糸を引いているので、非常に問題です。兵庫県では弁護団を結成し、警察も動き出しました。
講演の後の質疑では、兵庫県での団体や相談員、弁護士など専門家の連携の様子やHP運営サイトの悪質性などに質問が出され、北村先生は、奈良でも積極的にクーリング・オフをつかって活動を積み重ねていきましょうと呼びかけました。最後は当団体理事長の北條正崇弁護士が討論のまとめを行い、「今日の講演を参考に、奈良でも弁護士や相談員、関係機関や団体の連携のもと、こうした悪質事業者による被害をなくしていけるよう頑張っていきたい」
と挨拶しました。
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